書皮をおもちゃとした妄想

飽きた。

ここ数日、ブックカバーを剥がしている。
来る日も来る日も、ブックカバーを剥がしている。
半日いると鼻毛が三ミリくらい伸びてしまいそうな書庫から引き取ってきた本は、公文堂の火の車号(軽ワンボックス)で六往復分である。
そのうちの四割程度の本にブックカバーが掛かっていて、私は本のほこりをはらい、仕分けをしながら、「べりーべりー」と妖怪あずき洗いさながら一心不乱にブックカバーを剥がしてゆくのであった。

大して関心のある本がある訳でもないので仕事は非常に単調だ。
最初のうちはブックカバーを楽しむ余裕もあった。
「この本屋、子供の頃にあったなぁ」
「へー、ここって昔はカバーを作ってたんだ」
「こちらのお客さんはこんなところでも買ってるのか」
そんな事を呟きながらも、作業には着実に飽きてくる。


そこで、妄想を楽しむ事にしてみた。
「ふふふ、お嬢ちゃんの服の下にはどんな肌が隠れているのかな」
「抵抗なんて出来ないだろう?おとなしくこの手にひん剥かれるがいい!!」
とまあこんな具合である。
しかし薄暗い倉庫(兼店)の奥や店頭で三十を過ぎた女がこれでいいのだろうかという疑問も湧いてきた。
いや、それより何よりすぐ飽きた。


つづく