繰返し繰返しラジオから流れる歌声に繰返し繰返し死を認めさせられ

古本屋が慣用句のように使う言葉に、
「その本はもう死んだときにしか売れないよ」
というものがあります。
話題にならないと買う人のない本は、大きな賞を取るか亡くなるかしないとお客さんは関心を持ってくれません。
(最近のノーベル賞は例外でしたが)。


少しでも好感を持っている作家であれば、棚の本を見る度に
「ああ、もう新刊は出ないんだ」
としみじみしてしまいます。


大切な人を喪ったとき、死んだその瞬間よりも、
「今度これを食べさせてあげよう」とか「久しぶりに手紙を書こうかな」などと思ってしまったときのほうが悲しくなりました。
死んでしまえば普通は残るものなど何もありません。
心に生きている故人は、心を映した別の人。
思い出は変化するもので、相手が居て変化してゆく思い出は生きているけれど、一人で持つ思い出は自分の都合のいいようにしか変化ないものです。
その人との関係は、たとえ片方が居なくなったとしても永遠にはなり得ないのです。
死んだら終りなのです。


作品と自分の関係であれば、もともと向うが固定されたものであるのだから、ずっとずっと続いてゆきます。
何かを残せた人を羨ましくも思いますが、残して下さったことに深く感謝いたしましょう。


公文堂書店には賞を受賞しなくても読み応えのある本が沢山ございます。
連休の残りは鎌倉でどうぞ!
大型連休中は雨でも風でも通常営業です。