市場の出品から2

これは読み返しても何を考えていたのか分かりません。苦しかったのでしょうか。ちなみにまだ料理本は蒐集しています。(文中にある明治古典会=通称明古は市会の名前です)。


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私は食いしん坊です。親譲りの弱い胃を持ったせいで人の半分くらいしか食べられないのですが、そのせいかおいしいものに固執します。お金を払ってまずいものを食べるなんて信じられません。家庭で出来るものであれば自分で作った方がずっとおいしいので、外食するときは技術面も含めてなるべく家では食べられないものを注文します。
そんな私が今回の明古で落札したのは、趣味で集めている料理本です。大正十五年発行の「珍味支那料理法」。料理人の方で新しい料理を作るために探される方も多いですが、私は参考のために収集しているのではありません。
料理本を熟読していくと同じ料理でも行きつ戻りつ変化していることが分ります。何よりも面白いのは、西洋料理や支那料理が日本に来て段々と家庭に入っていく様です。大正十五年ですと「家庭向け」と書かれていても家庭で作れるような料理は少ないですし、現代から見れば「珍味」ということもないのです。支那料理の場合は特に油と火力が問題となりますから一般化するには時間がかかったのでしょう。 また、読み重ねて行くと見えてくることもたくさんあります。広東省出身の華僑が多かったために広東料理一辺倒だった日本の中華料理に四川料理上海料理等が入ってくる様子、料理学校等がどう受け入れてどう教えていったのか。横浜名物サンマー麺はどこから生まれたのか。私が先の明治古典会の後でみんなと食べた春巻は、日本に来た約百年の間に様々な歴史を秘めているのです。
一冊だけではもう通用しないただの料理本も、何冊かが集ることによって違う意味を持ち始めます。いつかはそんな味わいを持った目録を書くのが私の目標です。ちなみに今探しているのは行事食以外の、昭和三十三年以前のお弁当の本。お持ちの方はぜひ明治古典会までご出品下さい。切望しております。

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【参考図書】なし