看板息子4


甥に昼食を食べさせ、店長が食事に行きますと、そこには私と甥だけが残されるわけです。
厭きさせて「ママ−、ママー!」などと泣き叫ばれてはかないません。


まずはお絵かき
レジの横で帳面に力いっぱい線を描きます。
いや、まだそれしか描けないのです。
何かをかくと言うよりも、紙にペンを置き、引っかくということ、そしてそれによって軌跡が印されるとうのが楽しいのかもしれません。
「お前は石川九楊か」
心の中で突っ込みを入れましたが、あっさりお絵かき終了。


次はレジ遊びです。
電卓モードにして自由に触らせます。
どうやら音が出るのが楽しいようで、キーボードで遊んでいるときと様子が変わりません。
やがて両替のキーを押すとレジが開くことを学習し、開いては閉じ、開いては閉じ。
さらにはお金をぐちゃぐちゃにし始めました。
「こりゃいかん」と思うと同時に、突然目覚める私の教育意欲
「お金は大切なのよー、これがないと翼もご飯が食べられないのよー」
と言いながら、数種類のお金を取り出して一枚づつ甥に渡します。
「これはどこに入れればいいかな?」
判別ポイントは色→穴のようでした。
5円玉と50円玉を何度か間違えましたが、回を追うごとに正解率をあげ、
そしていきなり、厭きました
再びレジの開け閉めを開始です。
レジが壊れてしまいそうな勢いです。


「こりゃいかん」と今度は小さな台車(板に車輪をつけただけのもの)をもって店の裏に行きました。
「さあ自由に遊ぶがいい!」


台車に手をつき、雑巾がけのようにガーっと走り出したところまでは私の計算どおりでしたが。


ものすごくうるさい・・・。


店の中にまで聞こえてくるということは、すぐ隣にあるアパートへも筒抜けでしょう。
「こりゃいかん」と台車と甥を店の中に戻すと、王子様はいたく台車をお気に召していたようで、
店の中をガーっと走り出したのでありました。


「お客さんがいないからいいけど、いきなり入ってきたらびっくりするだろうなー」


もはや私は疲れきり、止める気力もありません。
ただ店長が早く帰ってきてくれることとお客さんが来ないことを祈り、レジの前でぐったりするのみでした。


私の昼食後は、ばーば(店長)と一緒に江ノ電に一区間だけ乗車
プラレール江ノ電ラッピングバージョン)も買ってもらって、
そりゃもうこれで楽しくなかったなんていったらおねえちゃん承知しないよ。


帰りの車の中で満足そうに江ノ電を握り締めてぐっすり眠る甥の顔を眺めながら、
「いつかこの子も私や妹のように買い入れの手伝いなんかしちゃうようになるのかしら」
なーんて思いつつも
「このまま小さいままでいてほしいなぁ」

などとわがままな事も思ってしまったのでした。


おわり