漢字の説明 上

店の黒電話がけたたましく鳴り響きました。
「ちょっとお尋ねしたいんですが」
探究書か買い取り依頼だろうと思い、返事をします。
「小町通を八幡宮の方へ行って、左側にある古本屋さんは何という名前ですか?」
「…(なぜうちに?)、もくせいどうさんだと思いますが」
「はぁ?」
「もくせいどう、です」
「あのねえ、ちょっと電話が遠いんだけど」
「も・く・せ・い・ど・う、です」
電話で出しうる精一杯の声で応答するのですが、なかなか伝わりません。何度かくり返してようやくご理解いただけました。
「じゃあ電話番号は何番ですか」
…。生憎全連名簿が手元にありませんでしたので「分かりません」と返答。
「どういう漢字ですかね」
ここから再び長い長い説明が始まるのでした。104番にお任せすればお互い早く済んだのにと思ったのは電話を切った後のこと。